昨年の9月に筑波山麓で両前脚の切れた犬を保護しました。
相談があったのは、国土地理院にお勤めのT様からです。
車でよくドライブされるといい、たまたま通りかかった坂道で、子犬たちを連れて、無い足で必死に移動する犬を見かけたとご連絡がありました。
犬はある農家の軒先に飼われている未去勢オス犬の、わずかな餌の残りで餓えをしのいでいました。
脚の切り口からは血が滲み、骨も見えていました。
仔犬が二匹、チョロチョロ縁の下を動くのを手早く捕まえて、農家のおばあさんは、そろそろ山に捨てに行こうと思ってたんだ、いつもこのくらいの大きさで捨てに行くんだよと悪びれず言いました。
私たちは三匹をハンサム先生に連れていき(もう診療時間を過ぎてましたが)、ママは入院して脚を治療し、不妊手術も施し、仔犬たちは譲渡会に出るためのいつもの虫落としをして頂きました。
片足でなく両前脚が切られた犬は、痩せておどおどしていて、震え上がる姿は哀れでした。
鳴き声もあげないから声帯が切られているのかも、と話し合いました。
ママはチャイと名付けました。毛色が独特の深みある茶だったからです。
ミルクをたっぷり入れた甘くてどろどろのトルコのチャイの色でした。
あのときの仔犬は、白い方をゆき、茶の方をいり、としました。
保護した地名の雪入から取ったのです。
保護したばかりのチャイです。
ない脚で必死に生きて、子育てしていました。
出産は1度ではないそうです。
1年前にふらりと現れて、そのまま居着いたとか。
いつも思うのですが、助けられる子はわずかです。
チャイの向こう側に、手が届かなかった無数の命があります。
シェルターで保護したコンちゃんも3本脚でした。
同時期に、別の犬がシェルターの近所で息絶えていましたが、やはり3本脚でした。
虐待により、あるいは狩猟用の違法で残酷な罠により、手足を切られて亡くなる犬がいかに多いか。
そして、取締を訴えても警察もマスコミもいかに動かないか。
動物には言葉がないから、自分で訴えることはできません。
こんなにつらいことがこの世にあっていいでしょうか?
なぜあきらめられる? おんおんと涙を流すだけでは変わらない、声をあげるしかないのです。
3本脚や2本脚の犬を見るのはもうやめにしたいものです。
母犬のチャイは、しばらくすると落ち着いて、震えもとまりました。
そしてのびやかになりました。表情も変わって明るくなりました。
だんだん鳴き声をあげるようになりました。太い声で驚きました。
白犬のカイトと仲良しになりました。
カイトを頼りにしています。
チャイとカイトはこれからもずっといっしょでなければ、と話しています。
昨年晩秋、シェルター開設時から私たちとシェルターに暮らしています。
多くの人に声をかけられ、可愛がってもらい、心の傷も癒えてきたのではないでしょうか。
ほかの犬を見ると、攻撃もする元気もあります。
ペンギンのように立ち上がり、肩を揺らして威嚇するのです。
チャイなりの豊かな表現です。
なお、国土地理院のT様は、チャイたちの医療費をご負担下さっただけでなく、現在CAPINシェルターで力仕事を担当下さっています。
草刈り機で草払いするなどの、たいへんな力仕事がシェルターには山ほどあります。
ふらりと里山に現れては、犬猫にごはんを、人間におせんべいを差し入れて下さる心強くありがたい存在です♪
チャイを可愛がって、気にかけて下さいます。
チャイのことをあきらめなかったT様のおかげで、この親子は命を繋ぎました。
昨年秋の深大寺譲渡会で家族をみつけたいりちゃん、今はもかちゃんの里親様に、一年ぶりの先日の譲渡会で再会しました。
もかちゃんの顔はチャイにそっくりで、違うところは長い毛と、甘えん坊の表情(愛されている証)と、揃った前肢です。
チャイが持てなかったものを、子どものもかちゃんがしっかりと手にしました。
もうそれで、十分です。
チャイの苦労は、脚の痛みは、もうそれで吹き飛んでしまうのではないでしょうか。
里親のK様、いつもありがとうございます。
もかちゃんをよろしくお願いします。
画面上のタイトルをクリックすると大きな画面で見ることができます。